壁紙・床・タバコ…退去費用の負担は入居者と大家どっち? 事例別に敷金診断士が解説

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📋 この記事でわかること
  • 画鋲・釘穴・クロスの傷は入居者と大家のどちらが払うか
  • 床・キッチン・水回りの具体的な負担の境界線
  • タバコ・ペットによる汚損の費用負担ルール
  • 請求が不当だと思ったときの対処法

「退去のとき、管理会社からいろいろ請求されたけど、これって本当に払わないといけないの?」

退去費用のトラブルで最も多いのが、「どちらが負担すべきか」の認識のズレです。入居者は「普通に使っていただけ」と感じ、管理会社は「明らかに傷んでいる」と主張する。この平行線が、毎年1万件以上(国民生活センター調べ)の相談につながっています。

この記事では、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に基づき、よくある損耗・汚損のケース別に「入居者負担」「大家負担」の境界線をわかりやすく解説します。


① 壁紙(クロス)の傷・穴・汚れ

壁紙は面積が広く費用も高いため、退去費用トラブルの中で最も揉めやすい箇所です。同じ「穴」でも、その大きさや原因によって負担者が変わります。

画鋲・ピンの穴 → 原則「大家負担」
🔵 大家(賃貸人)負担
  • カレンダーやポスターを貼るための画鋲・ピンの穴
  • 下地ボード(石膏ボード)の張替えが不要な程度のもの
  • エアコン(入居者所有)設置による壁のビス穴・跡
  • 日照によるクロスの変色・色あせ
  • テレビ・冷蔵庫の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
🔴 入居者(賃借人)負担
  • 重量物(棚・額縁など)をかけるための釘穴・ネジ穴で下地ボードの張替えが必要なもの
  • 天井に直接つけた照明器具の跡
  • 落書きなど故意による毀損
  • 結露を放置してカビ・シミが壁まで浸透した場合
💡 敷金診断士のポイント
境界線は穴の「数」ではなく「深さと下地へのダメージ」です。画鋲・ピン程度であれば、ガイドライン上は大家負担が原則。退去時に「画鋲の穴も請求する」と言われた場合は、根拠を確認することが重要です。なお、クロスの残存価値は6年で1円となるため、6年以上居住していれば、仮に入居者負担と判断されても費用負担は工事費の一部のみとなる可能性があります。
クロスの費用負担の計算方法
入居年数 クロスの残存価値 入居者の実質負担
1年約83%材料費の約83%+工事費の一部
3年約50%材料費の約50%+工事費の一部
6年以上残存価値1円工事費(施工費・人件費)の一部のみ
⚠️ 注意:6年以上住んでいても「工事費ゼロ」にはなりません。材料費の負担はなくなりますが、施工費・人件費の一部は別途発生する場合があります。

② 床(フローリング・カーペット)の傷・汚れ

床は修繕単価が高く、1㎡あたりの費用が大きくなりやすいため、判断基準をしっかり押さえておくことが重要です。

🔵 大家(賃貸人)負担
  • 家具の設置によるカーペット・フローリングのへこみ・跡
  • 日照・建物構造欠陥(雨漏りなど)によるフローリングの色落ち・変色
  • フローリングのワックスがけ
  • 畳の裏返し・表替え(破損がない場合)
🔴 入居者(賃借人)負担
  • 飲み物をこぼした後に放置してできたシミ・カビ
  • 冷蔵庫下のサビを放置して床に汚損を与えた場合
  • 引越し作業で生じた引っかきキズ
  • 入居者の不注意で雨が吹き込んだことによるフローリングの色落ち
  • ペットの排泄物・爪による傷
💡 敷金診断士のポイント
「ついた瞬間にできた傷」か「放置した結果悪化したダメージ」かが境界線です。飲みこぼし自体は通常の生活の範囲ですが、そのまま放置してシミ・カビになった場合は入居者の善管注意義務違反(手入れを怠った)と判断される可能性があります。なお、フローリングの部分補修は経過年数を考慮しないため、6年以上住んでいても補修費は入居者負担となる点に注意が必要です。

③ キッチン・水回りの汚れ
🔵 大家(賃貸人)負担
  • 通常のクリーニングで落ちる程度の汚れ(入居者が日常的に清掃していた場合)
  • 専門業者による全体ハウスクリーニング(入居者が通常の清掃をしていた場合)
  • エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いが付着していない場合)
  • 浴槽・風呂釜の取替え(破損がない場合)
🔴 入居者(賃借人)負担
  • 日常の清掃を怠ったためのガスコンロ・換気扇の油汚れ・すす
  • 風呂・トイレ・洗面台の水垢・カビ(清掃・手入れを怠った場合)
  • 不適切な使い方による設備の毀損
  • 鍵の紛失または破損による取替え
💡 敷金診断士のポイント
ハウスクリーニング費用を「特約」で入居者負担としている物件は多いですが、その特約が有効とされるには「契約書に具体的な金額が明記されている」か「入居時に十分な説明を受けて合意した」ことが必要です(最高裁判所平成17年12月16日判決)。「契約書に書いてあるから払え」と言われても、特約の内容が曖昧な場合は交渉の余地がある可能性があります。個別の判断については、消費生活センターや敷金診断士にご相談ください。

④ タバコ・ペットによる汚損

この2つについては、ガイドラインでも明確に「通常の使用の範囲外」と位置づけられています。ただし、費用負担のルールを正確に知っておくことが重要です。

タバコのヤニ・臭いの場合
🔴 入居者(賃借人)負担
  • 喫煙によりクロスがヤニで変色・臭いが付着した場合
  • 居室全体にヤニ・臭いが及んでいる場合は居室全体のクリーニングまたは張替え
  • エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いが付着している場合)
⚠️ タバコの場合も、クロスの経過年数による残存価値の考慮は必要です。6年以上居住していれば、クロス材料費の負担はほぼ1円となり、クリーニング費用や施工費の一部のみが入居者負担となる可能性があります。「6年住んでいるのに全額請求された」という場合は、計算根拠を確認してください。
ペットによるキズ・臭いの場合
🔴 入居者(賃借人)負担
  • ペットによる柱・クロス等のキズ・臭いの付着
  • ペット不可物件での飼育は用法違反として全額負担となる場合がある
  • ペット可物件でも、通常損耗を超えるキズ・臭いは入居者負担
💡 敷金診断士のポイント
ペット可物件であっても、退去費用が高額になりやすいのは事実です。ただし「何でもペットのせい」にされる場合もあるため、入居時のチェックリストや写真記録が重要な証拠になります。退去前に自分で室内を撮影・記録しておくことをお勧めします。

⑤ 部位別 負担区分 早見表

よくある損耗・汚損のケースを一覧にまとめました。退去時の請求内容と照らし合わせてご活用ください。

部位 具体的な損耗・汚損 負担者
壁・天井
(クロス)
画鋲・ピンの穴(下地ボード張替不要)大家負担
日照・電気ヤケによる変色大家負担
エアコン(入居者所有)のビス穴・跡大家負担
釘・ネジ穴(下地ボード張替が必要)入居者負担
タバコのヤニ・臭いによる変色入居者負担
家具設置によるカーペット・フローリングのへこみ・跡大家負担
日照による畳・フローリングの変色大家負担
フローリングのワックスがけ大家負担
飲みこぼしを放置したシミ・カビ入居者負担
引越し作業による引っかきキズ入居者負担
キッチン・
水回り
通常清掃で落ちる汚れ(日常的に清掃していた場合)大家負担
ハウスクリーニング(入居者が通常清掃していた場合)大家負担
換気扇・ガスコンロの油汚れ(清掃を怠った場合)入居者負担
風呂・トイレ・洗面台の水垢・カビ(手入れを怠った場合)入居者負担
建具・柱地震で破損したガラス・網戸の張替え(破損なし)大家負担
ペットによる柱・クロスのキズ・臭い入居者負担
その他鍵の取替え(破損・紛失なし)大家負担
鍵の紛失または破損による取替え入居者負担

請求内容に納得いかない場合の対処法

退去費用の請求書を受け取ったら、以下の手順で確認することをお勧めします。

  1. 請求明細書の内訳を確認する(「一式」表記は内訳を求める)
  2. 本記事の早見表と照らし合わせる
  3. 入居年数と耐用年数を確認して負担割合を計算する
  4. 納得できない場合は書面で内訳・根拠の説明を求める
  5. 専門家(消費生活センター・敷金診断士・弁護士)に相談する
💬 退去費用の請求に納得いかない方へ

「払いすぎていないか確認したい」という段階からご相談いただけます。敷金診断士は退去費用・原状回復トラブルの専門家です。

📞 フリーダイヤル:0120-926-282 年中無休/9:00〜20:00


🏠 オーナーの方へ|境界線を知ることが「信頼」につながる

入居者側の視点でこの記事を読んでいただいたオーナーの方にお伝えしたいことがあります。

退去費用の「グレーゾーン」をどちら側に判断するかは、オーナーの経営姿勢が問われる場面です。ガイドラインの基準を正確に理解し、適正な精算を行うオーナーは、入居者からの口コミ評価が高まり、次の入居者獲得にも好影響をもたらします。

また、管理会社が提示する修繕費が適正かどうかを、オーナー自身がチェックできる知識を持つことも重要です。

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退去費用の精算が不透明・修繕見積もりが高いと感じる場合は、管理会社の比較・変更を検討してみてください。

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❓ よくある質問
Q. 画鋲の穴がたくさんあっても大家負担になりますか?
A. 国土交通省ガイドラインでは、画鋲・ピン等の穴は「下地ボードの張替えが不要な程度のもの」であれば大家負担が原則とされています。穴の数が多くても、下地ボードへのダメージがなければ入居者への請求は難しい可能性があります。ただし「数十か所にわたる大量の穴」など、通常の生活を超えると判断されるケースは別途相談が必要です。
Q. 6年以上住んでいたら退去費用はかかりませんか?
A. クロスやカーペットなど耐用年数6年の設備については、6年以上居住すると残存価値がほぼ1円となるため、材料費の負担はほぼなくなります。ただし、工事の施工費・人件費は別途発生する場合があります。また、フローリングの部分補修・鍵の紛失・ハウスクリーニング(清掃を怠った場合)などは経過年数が考慮されないため、6年以上住んでいても負担が発生することがあります。
Q. タバコを吸っていたら退去費用は全額入居者負担ですか?
A. 全額負担にはなりません。タバコによるヤニ・臭いは入居者負担と判断されますが、クロスの材料費については耐用年数(6年)をもとに経過年数で按分されます。6年以上居住していれば材料費の負担はほぼなく、クリーニング費用や施工費の一部のみが入居者負担となる可能性があります。
Q. ハウスクリーニング費用は必ず払わないといけませんか?
A. 入居者が日常的に清掃を行っていた場合、ハウスクリーニング費用は原則として大家負担です。ただし、契約書に「ハウスクリーニング費用は借主負担」という特約が明記されており、入居時に十分な説明を受けて合意していた場合は、借主負担とされるケースがあります。特約の内容が曖昧な場合や説明を受けた記憶がない場合は、専門家への相談をお勧めします。
Q. 退去費用の請求に異議を申し出る方法はありますか?
A. 請求内容に納得できない場合は、まず管理会社に「請求の根拠・内訳・計算式を書面でご説明ください」と説明を求めることができます。具体的な交渉や法的対応については、消費生活センター(188)・敷金診断士・弁護士への相談をお勧めします。いずれも、入居時・退去時の写真記録が有力な資料となります。個別の案件への対応については専門家にご相談ください。

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本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」および最高裁判所判例をもとに、一般的な情報の提供を目的として作成しています。本記事は個別の法律相談・交渉の代行を行うものではありません。個別の契約内容や具体的なトラブルについては、消費生活センター・弁護士・敷金診断士にご相談ください。