② 管理会社を「味方」につける:客付けを加速させる営業活動の極意

記事内に広告が含まれています。

「良い物件を作ったのに、なぜか紹介してもらえない……」

そんな悩みの答えは、物件のスペックではなく、あなたと管理・仲介会社の「距離感」にあるかもしれません。賃貸経営において、管理会社や仲介担当者はあなたの代わりにお客様へ魅力を伝える「最強の営業チーム」です。しかし、彼らも一人の人間。数ある物件の中から、どの鍵を手に取り、どのお客様に真っ先に紹介するかは、彼らの「感情」と「インセンティブ」に大きく左右されます。

賃貸不動産経営管理士として伝えたいのは、管理会社を単なる「外注先」としてではなく、同じゴールを目指す「パートナー」へと変貌させるコミュニケーション戦略です。

仲介担当者が思わず「決めたい!」と熱を帯びる報酬設計の裏技から、煩わしい交渉を即決させるスピード感、そして「この大家さんのためなら」と思わせる信頼関係の築き方まで。

「選ばれる物件」になる前に、「紹介したくなるオーナー」になること。客付けのスピードを劇的に加速させる、現場密着型の営業極意を解き明かします。

オーナー様がどれだけ物件を愛していても、仲介店舗の担当者が動いてくれなければ、その魅力は入居希望者に届きません。

第1章:仲介担当者の「紹介メカニズム」を理解する

なぜ、彼らはあなたの物件ではなく、隣の物件を先に紹介するのか?そこには、感情論だけではない明確な「力学」が働いています。

1-1. 担当者が「真っ先に鍵を持ち出す」物件の3条件

仲介担当者が、数ある在庫の中から「今日、これを見せよう」と決める物件には、共通した3つの条件があります。

  1. 「決まりやすい(商品力)」: 写真が綺麗で、室内が整っている。案内した際に、お客様が「おっ、いいですね」とポジティブな反応を返してくれる確率が高い物件です。担当者は、自分の提案に「外れ」がないことを証明したいと考えています。
  2. 「案内しやすい(現場力)」: 鍵が現地(キーボックス)にあるか、あるいはスマホで即時に解錠予約ができるか。わざわざ管理会社まで鍵を取りに行く手間(往復30分など)がある物件は、それだけで紹介候補から外れる「タイムロスの壁」があります。
  3. 「条件が良い(決定力)」: 家賃が妥当であることはもちろん、初期費用の安さやフリーレントの有無、そして何より「AD(広告料)」がしっかりと設定されているか。自分の売上目標に直結する物件は、無意識のうちに熱量を込めて紹介されます。

1-2. 物件情報の「鮮度」と「正確性」が信頼の土台

プロの営業マンにとって最も恐ろしいのは、「お客様の前で恥をかくこと」です。

  • マイソク(募集図面)のミスは致命的: 「駐輪場ありと書いてあるのに実際は満車」「光回線完備とあるのに工事が必要だった」といった情報のズレは、担当者とお客様の信頼関係を一瞬で壊します。一度でも「情報が古い」というレッテルを貼られると、その担当者は二度とあなたの物件を提案しなくなります。
  • 空室情報の更新スピード: 「まだ空いている」と思って案内したのに、現地に着いたら他社で決まっていた。これは仲介担当者にとって最悪のシナリオです。常に最新の空室状況を管理会社と共有し、正確な情報を市場に流し続けることが、紹介の「土俵」に乗り続けるための最低条件です。

1-3. 賃貸不動産経営管理士が見る、仲介店舗の「ノルマと心理」

仲介会社の担当者は、日々厳しい成約件数のノルマに追われています。特に繁忙期(1月〜3月)の彼らは、一分一秒を争う戦場にいます。

  • 「最短ルート」の誘惑: 目の前のお客様を「今日中に、確実に決めてもらいたい」と考えたとき、彼らが選ぶのは「難しい交渉が必要な物件」ではなく、「説明が不要で、サクッと決まる物件」です。
  • 心理的コストの削減: 「この大家さんは返事が遅い」「入居審査がやたらと厳しい」といった心理的ハードルがある物件は、どれだけ外観が良くても敬遠されます。担当者に「この物件なら、手間をかけずに一発で決まる」という成功体験を積ませること。これこそが、紹介の優先順位を不動の1位にするための極意です。

多くのオーナー様は「AD(広告料)を上げれば決まる」と考えがちですが、それは半分正解で半分間違いです。お金の出し方一つで、それは「ただの経費」にもなれば、担当者を突き動かす「強力なガソリン」にもなります。

第2章:AD(広告料)とキャンペーンの戦略的活用

「お金を払えば動く」という単純な話ではない、現場の熱量を最大化させるための心理戦を読み解きます。

ご注意: 宅建業法上、不動産業者が受け取れる報酬額には上限があります。AD(広告料)は、あくまで「オーナーからの依頼に基づく特別な広告費用」という名目であり、地域や事例によって運用が異なります。実施の際は必ず管理会社等へ法的な適正範囲を確認してください。

2-1. 地域相場+αのAD設定:費用対効果を最大化する「期間限定」の魔法

AD(広告料)は、オーナーからの特別な広告依頼に対する実費精算としての性質を持ちますが、成約への強力な動機付けになります。しかし、ずっと高い状態が続くと、それは「当たり前」になり、紹介の優先順位はまた元に戻ってしまいます。

  • 「期間限定」による飢餓感の創出: 「今月末までに成約してくれたらADを2ヶ月分にアップします」といった期間限定のキャンペーンを打ちます。これにより、担当者の心理には「今決めないと損だ」「今、最優先で紹介すべき物件だ」というスイッチが入ります。
  • 「端数」による差別化: 相場がAD1ヶ月のエリアなら、「1.5ヶ月」や「1ヶ月+ギフトカード5,000円」といった設定にします。この「+α」の存在が、数ある物件リストの中で担当者の目を引き、お客様への「最後の一押し」を生む原動力になります。

2-2. 仲介店舗への「決起会」や「差し入れ」の正しい作法

仲介店舗のスタッフとの関係性は、単なる「取引先」から「身内」へと昇華させるべきです。ただし、やり方を間違えると「面倒な大家」と思われてしまいます。

  • 差し入れは「分かち合えるもの」を: 繁忙期に訪問する際は、個包装で日持ちのする高級なお菓子や、栄養ドリンクのセットなどが喜ばれます。目的は、店長だけでなく「実際に案内をしてくれる若手担当者」全員に名前を覚えてもらうことです。
  • 「決起会」という名の情報交換会: 管理会社の担当者を通じ、主要な仲介店舗の店長やエース級の担当者を誘って食事会を開きます。ここでは接待をするのではなく、「最近の入居希望者は何を求めていますか?」と教えを請う姿勢を見せてください。彼らを「アドバイザー」として立てることで、彼らはあなたの物件を「自分の意見が反映された物件」として熱心に売ってくれるようになります。

2-3. 成約時の「紹介料」を個人へ渡す際のリスクとマナー

成約してくれた担当者個人に直接「お礼」をしたいと考えるオーナー様も多いですが、ここには現代ならではの注意点があります。

  • コンプライアンスの壁: 大手仲介会社などでは、個人がオーナーから直接現金や金券を受け取ることを厳格に禁じているケースが増えています。良かれと思って渡したものが、担当者を窮地に追い込む可能性を考慮しなければなりません。
  • 「会社を通した公式な報酬」+「個人的な感謝」: 最もスマートなのは、ADとして会社に正当な報酬を支払った上で、担当者には「素晴らしいお客様を付けてくれてありがとう」という感謝の電話や、常識の範囲内の菓子折りを贈ることです。
  • プロとしてのマナー: もし金券などを渡す場合は、必ず「店長(上司)」の目の前で、あるいは許可を取ってから渡すのが、担当者の立場を守るプロの気配りです。

管理会社は、あなたの物件を最も近くで見守る「パートナー」です。彼らのモチベーションをコントロールし、受動的な「事務代行」から能動的な「営業チーム」へと変貌させるコミュニケーション術を解説します。

第3章:管理会社の「やる気スイッチ」を押し続けるコミュニケーション

任せきりにせず、かといって口出ししすぎない。オーナーは現場に立つのではなく、最高のパフォーマンスを引き出す「司令塔」として振る舞うべきです。

3-1. 週一回の「空室状況確認」を「作戦会議」に変える質問術

多くのオーナーが「まだ決まりませんか?」という、担当者を追い詰めるだけの電話をしてしまいがちです。これでは担当者は電話に出るのが億劫になり、心理的な距離が生まれます。

  • 「結果」ではなく「プロセス」を聞く: 「決まりましたか?」ではなく、**「今週の内見は何件でしたか?」「内見された方は、どこが気に入って、どこで迷われていましたか?」**と、現場の生きた情報を吸い上げる質問に変えてください。
  • 情報の言語化を促す: 「他と比較して、うちの物件の『あと一歩』は何だと思いますか?」と問いかけることで、担当者はプロとしての視点を引き出され、「それなら、初期費用を少し調整すれば決まるかもしれません」といった具体的な提案(作戦)を出しやすくなります。

3-2. 競合物件の動きを共有し、条件変更の「即断即決」を見せる

仲介店舗の担当者が最も嫌うのは、申し込みが入った際の条件交渉(家賃交渉や入居時期の調整)に、オーナーの返事待ちで数日かかることです。

  • 判断の「デッドライン」を共有する: 「隣の物件が家賃を2,000円下げたようですね。うちは家賃は据え置きで、フリーレント1ヶ月までならその場で即答していいですよ」と、あらかじめ**「判断のカード」**を担当者に預けておきます。
  • 「話が早いオーナー」というブランド: 客付けの現場では、スピードが命です。「このオーナーなら、お客様の目の前で電話一本で決着がつく」という安心感は、仲介担当者にとって何よりも強力な武器になり、優先的に紹介される理由になります。

3-3. 管理担当者の「隠れた苦労」を労い、チーム意識を醸成する

管理担当者は、入居者からのクレームや設備の故障対応など、精神的にタフな業務を日々こなしています。彼らを単なる「業者」として扱うか、「戦友」として扱うかで、トラブル時の対応力に雲泥の差が出ます。

  • 「負の報告」こそ感謝を伝える: 水漏れや騒音トラブルの報告を受けた際、「なんでそんなことが起きるんだ!」と怒るのではなく、**「大変な対応をありがとうございます。助かります」**という一言を添えてください。
  • 賃貸不動産経営管理士の調整能力: トラブル時には、責任を追及するのではなく「解決のための合意形成」に注力します。オーナーが理解を示し、迅速に修繕費を承認する姿勢を見せることで、担当者は「このオーナーの物件は守りたい」という強いチーム意識を持つようになります。

管理会社に任せることは「放置」することではありません。オーナー自らが「営業部長」として動くことで、情報の拡散スピードは劇的に上がります。最終章では、管理会社の枠を超えて自ら客路を切り開く「攻めのリーシング」について解説します。


第4章:自ら動く「自主リーシング」のすすめ

管理会社だけに頼らず、オーナー自ら窓口を広げる。この主体性こそが、空室期間を最短にするための最後のピースです。

4-1. 周辺の仲介店舗へ「マイソク」を持って飛び込み営業をするコツ

管理会社も営業はしていますが、彼らが回るのは主要な店舗のみです。オーナー自ら、地元の路地裏にあるような小さな不動産屋にも足を運びましょう。

  • 「お願い」ではなく「情報提供」の姿勢で: 「管理は〇〇不動産に任せているのですが、非常に良い物件なのでぜひ御社のお客様にも紹介していただきたくて、図面を持ってきました」と伝えます。
  • 現場の「本音」を拾う絶好の機会: 飛び込み営業の最大のメリットは、管理会社を通さない「市場の生の声」が聞けることです。「このエリアは今、初期費用ゼロじゃないと動きませんよ」といった、管理会社が言いにくい耳の痛いアドバイスが、空室脱出のヒントになります。

4-2. SNSやポータルサイト直出し(ジモティー等)の活用と注意点

現代の賃貸経営では、不動産業界のネットワーク(REINS等)だけに頼る必要はありません。

  • ジモティーやSNSの破壊力: 「ジモティー」などの掲示板サイトや、Instagram、X(旧Twitter)での募集は、初期費用を抑えたい層や、特定のライフスタイルを求める層にダイレクトに刺さります。仲介手数料が発生しない(あるいは低価格な)メリットは、入居者にとって非常に強力なフックになります。
  • セルフリーシングのリスク管理: 直接募集の最大の懸念は「入居審査」です。必ず管理会社の審査を通すこと、あるいは家賃保証会社との契約を必須にすることを忘れないでください。また、契約実務はトラブル防止のため、必ずプロ(管理会社や仲介会社)を介在させ、契約書を作成する「客付け窓口」としての体裁を整えましょう。

4-3. 賃貸不動産経営管理士の結論:客付けは「人対人」の信頼がすべてである

どれだけテクノロジーが進化しても、不動産の「最後の一押し」を作るのは、人と人との信頼関係です。

  • 「顔が見えるオーナー」の強み: 仲介担当者は、数千の物件を扱っています。その中で「あ、あの時の熱心な大家さんの物件だ」と思い出してもらえるかどうか。一度会って言葉を交わしたオーナーの物件は、彼らにとって単なる「在庫」ではなく、**「何とかしてあげたい誰かの資産」**に変わります。
  • 誠実さが利益を生む: 物件に誇りを持ち、それを自ら熱心に伝えるオーナーの姿勢は、必ず仲介担当者を通じて入居希望者にも伝わります。「この大家さんなら安心して住める」という無形の価値こそが、競合物件に対する最大の差別化要因であり、最強の空室対策なのです。

【まとめ】管理会社は、あなたの物件を磨く「鏡」である

客付けの成功は、優れた物件と、それを情熱を持って伝える「人」が揃って初めて達成されます。管理会社や仲介担当者を単なる作業の代行者と見なすか、共に物件の未来を作る「パートナー」と見なすか。その意識の差が、空室期間の長さを決定づけます。

  • 力学を味方にする: 仲介担当者の心理とインセンティブを理解し、彼らが「真っ先に鍵を持ち出したくなる」環境を整える。
  • 報酬を戦略に変える: 単なるAD(広告料)の増額ではなく、期間限定やキャンペーンといった「仕掛け」で現場に熱狂を生む。
  • レスポンスで圧倒する: 判断のデッドラインを共有し、即断即決の姿勢を示すことで、「話しやすい・決めやすいオーナー」という最強のブランドを築く。
  • 主体性を忘れない: 管理会社に任せきりにせず、自らも現場の声を拾い、情報の拡散に動く「営業部長」としての自覚を持つ。

どれほどデジタル化が進んでも、不動産仲介の現場は「人対人」の熱量で動いています。あなたが誠実に向き合い、感謝を伝え、迅速に動く。その「信頼の積み重ね」こそが、どんなリフォームよりも強力な武器となり、あなたの物件を常に満室へと導く原動力になるのです。

ご注意: 宅建業法上、不動産業者が受け取れる報酬額には上限があります。AD(広告料)は、あくまで「オーナーからの依頼に基づく特別な広告費用」という名目であり、地域や事例によって運用が異なります。実施の際は必ず管理会社等へ法的な適正範囲を確認してください。